無料兵士にも「個」がある。貴賤の別なく心を持った人間である。それを知ったソールくん、人生の経験値がひとつ増えました。
ポーションの隠された部屋を後にした一行。
しばらく歩くと、一本道の前方より、強烈な獣臭さが鼻につくようになります。
「犬小屋に顔を入れたようだな……」
刺激に思わずくしゃみをするソールくん。 他の兵士たちは剣の柄に手をやり警戒の姿勢。そこに、何者かの声が響きます。
「いちにいさん、いちにいさん、いち、にい、さん!」
勇ましい行進の掛け声にも聞こえますが、果たしてその正体は。
【五枚目】62:バンダースナッチ(LV3、生命点6、攻撃回数3)
向こうから大型犬にも似た獣が駆け寄ってきます。
「9人」
こちらを眺め渡してうっとりと微笑んだ獣の名はバンダースナッチ。この迷宮においては3の倍数に執着していることで知られます。こちらのパーティーが9人であったことから、嬉々として駆け寄ってきたのでしょう。
言葉を操る相手、交渉の余地があるか。反応を見ます。出目は6です。
反応表:6=死ぬまで戦う
こちらの頭数は獣の愛する3×3人。見逃してくれるはずもないですね。愚門でしたね。
バンダースナッチはソールくんを見て甘ったるく鼻を鳴らします。
「ああ、なんて美味しそうな3の倍数」
バンダースナッチは現在の生命点が3の倍数になっているキャラを優先的に攻撃対象にするというという習性があります。しかもその場合、生命点へのダメージが2点入ります。危ない。
ソールくんの生命点は基礎値+経験点で「6」。つまりソールくんが狙われやすくなります。ここでは3回の攻撃のうち最初の2回がソールくんへ、残り1回が従者たちに向かうと解釈して処理を進めます。
※プレイヤーからのお詫び:実のところソールくんの生命点の最大値は「8」。プレイ時に革鎧の+2を失念してました。バンダースナッチは鎧抜きの生体部分にご執心だったということで、ひとつお許しください。
さあ切り抜けられるか? 戦闘開始!
反応表が「敵対的」だった場合は、敵が先に攻撃します。ご注意を。
※プレイヤーからのお詫び:ルールブックを再度読み込んだ結果、相手が敵対的な場合も飛び道具持ちによる先制攻撃は可能と思われます。この時はバンダースナッチからのプレッシャーでプレイヤーの頭が混乱しておりました。いきなり近接攻撃から開始となっています。主にソールくんにごめんなさい。
1ラウンド目。まずは防御から。ダイスを3回転がして6、1、6。失敗1。
強い執着を見せるバンダースナッチが予期せぬ素早さを見せます。兵士の間を駆け抜けて、電撃的にソールくんの脇腹に噛み付いたのです。
悲鳴を上げるソールくん。
何とか引き剥がさなくては! 兵士たちが駆け寄り、剣を振り上げます。
攻撃のダイスロールは4回成功。
兵士たちの執拗な攻撃に、一旦バンダースナッチがソールくんから離れます。
ソールくんから離れるも、バンダースナッチは未だ健在。口の周りについた血を舐めて恍惚の様子です。
「6の血は美味しいねえ。もっと欲しい、もっと、もっと……」
執着が重い。爛々と自分だけを見つめてくるバンダースナッチから、ソールくんもまた目が離せません。離したら死ぬ、と思っています。
2ラウンド目。攻撃が2回当たった場合、3の倍数特性でソールくんには4ダメージが入ります。下手するとここで倒れることに。どうしよう。
ここで前のパネルで手に入れたポーションを飲むこともできます。しかしバンダースナッチにロックオンされた状態で冷静にぐびぐびやるのは無理だと思う、という判断で、回復せず戦闘続行しました。
執念のバンダースナッチ、再び突進。
防御は4、1、1となって2回失敗。ソールくんに1回、従者に1回のダメージが入ります。
身を呈して阻もうとした兵士をはね飛ばし、ソールくんの肩に噛みつきます。
転じて攻撃。
生臭い息と失血で朦朧となりながらも、ソールくん死にものぐるいの反撃。刃が獣の腹に刺さります(出目5)。
続いて魔術師が重そうな杖を――そいつは鈍器だったのか?――バンダースナッチの頭部に振り下ろしました。これが見事に当たり(出目6)、バンダースナッチは牙を離すとよろめいて後ずさり、地面に倒れ込みます。
まだその目はソールくんを愛おしげに凝視していますが、もはや光はありません。
恐る恐る兵士のひとりが剣先でバンダースナッチを突き、何も反応が返ってこないのを確かめて、勝利を宣言します。
しかし勝利の喜びよりも、悲しみがありました。
動かなくなった兵士の骸。その亡骸を泣きながら整えるタッチウッドこと兵士Aの背中を、ソールくんは呆然として見つめています。 ここで、初めての犠牲者が出てしまいました。