
このリプレイは、
天狗ろむ様のシナリオ
『ヴォンダンス~踊らぬ犬は冬に鳴く~』
を遊んだ記録を小説仕立てにしたものです。
ハージェスの墓所洞窟で、氷漬けを免れたコボルトの少女を発見。
共に最深部を目指すこととなります。
どうやら今回は彼女の「鼻」が活きる気配!
シナリオ参照元:
『ヴォンダンス~踊らぬ犬は冬に鳴く~』
[冒険記録3-3]35:食事中のゾンビ→【察知】42:血を求めし群れ
〈食事中のゾンビ〉は10体以上ものゾンビを相手取るできごと。ウルール&デールを連れた状況ではリスクが高いかなあと悩み、ここでコボルトたちの特技【察知】を使ってみることに。まずは年長者からということでウルールくんにお願いしましたが、何と失敗してしまいます。リエンス主従の匂いが惑わせているのか……? 気を取り直してデールちゃんにお願いしたところ、出たのは〈血を求めし群れ〉。どっちもハードな気配がするものの、対象が「ランダムに一人」なら後者の方がましでしょう。折角デールちゃんに教えてもらったのですしね。ということで。
鳥人の騎士ツェス・フォレストウィンは、落ち着かない気持ちでランタンを掲げて先頭を歩んでいる。
一歩後ろに続くのは犬面の種族コボルトのウルールと、ウルールに従う〈奏楽ゴーレム〉だ。いつものように、主人ブラークがいるのではなく。その主人は最後方にいて、コボルトのガキ、もとい、子供の世話をしている。
「……でね、ダヴァラン殿に美味しいお弁当を作ってもらったから、私は途中で食べるのを楽しみにしているんだよ」
「うそだあ、こんな怖いところにおべんとなんて!」
「聖騎士は嘘をつかないんだよ、レディ。」
「うーそだーあ!」
ツェスは後ろを振り返って叱りつけたい衝動を、ぐっと我慢する。主人ブラーク・オ・リエンスの意図は明白だ。コボルトの少女から信頼を得て緊張を取り除き、パニックを起こさせないこと。そのために役立つのは、ブラークの砕けた物腰と、種族の垣根を越えて好かれる明るさである。適材適所だ。
ウルールの方が適役に思われるかもしれないが、それは誤りで、こちらに心を開かせないとハージェスと対峙した段に少女がブラークとツェスの指示を聞かず足手まといとなる可能性がある。そうなればバージェスは少女を狙うだろう。何故ならブラークは絶対に少女を庇うからだ。
そしてウルールの僕ちゃんには一心不乱に踊ってもらわねば困る。まあ、本心を言えば、ツェスとしては悠長な手段に頼らず亡霊など善神の御力で根こそぎ消し去った方が早いとも考えているのだが。
しかし、しかれども、理屈は飲み込めるのだが、それでもツェスはあのよく回る主人の舌ができれば自分の前、少なくとも真後ろくらいで回っていないと落ち着かない。致命的な何かから、主人を守れないような気がする。
その時、
「ツェス、止まってくれ。その道は左に行こう」
主人の声が聞こえた。
「えっ」
と反応したのはウルールである。
「この道が最短ですけど」
「あのね、そっち、怖いのいる。沢山いるのよ」
コボルトの少女がブラークの中指をにぎにぎしながら述べた要領を得ない話を総合すると、この道の先ではゾンビと思われる嫌らしい集団が待ち受けているということだった。
「なら、こちら側には何があるんだ」
「……」
少女はもじもじしている。ブラークが身をかがめて目線を合わせると、コボルトの少女は彼の耳元に鼻をねじ込まんばかりにして囁いた。
「うん、うん? うん、そうか。ツェス、〈蚊〉だそうだ。蚊。私は不浄な死体より蚊の方が良いと思うんだが、おっ、こらレディ、耳にわざと鼻息を吹きかけるのはよろしくないね!」
懐かれている。懐かれ過ぎかもしれない。取り上げるか、とツェスは思う。少女からブラークを、である。これは断じて焼きもちではない。
ツェスは、難しい顔をしているウルールに水を向けた。
「お前の意見は?」
水を向けられると思っていなかったウルールは一瞬ポカンとして、それから、
「僕は、おふたりの判断に従います」
と立派な受け答えをする。我ながら甘くなったなとツェスは思った。騎士が庶民に意見を聞くなどと……。それも主人から受けた長年の影響によるものに違いない。ブラークときたら、必要とあらば、路地裏の浮浪児と数年来の悪友のような顔をして話し込むこともできるのである。
対象は「ランダムに一人」なのですが、まずゴーレムは対象外となり、残った四人を見渡した時に誰が一番蚊に刺されやすいのかは明白な気がするんですよね。
ツェスはランタンをブラークに渡した。阿吽の呼吸というよりは、戦場で数え切れぬほどこしらえた虫刺されの経験ゆえにである。
「よろしい、ツェス。それでは私は騎士らしく、我が身を犠牲に捧げることとする」
「大袈裟な」
「盛大に羽ばたきたまえよ! では諸君、左だ」
~五分後~
「ウワーッ! ウワーッ! ウワーッ!!!」
「黙れブラーク! 口の中に入るぞ!」
「気持ち悪いんだよツェス! 喋っていないと気が狂いそうだ! それ、もっと力強く羽ばたきたまえったら!」
「やっている! お前も崇高な覚悟はどうした! 鳥人に生まれなかったことを後悔しろ!」
「くそう、反論できない! 毛皮毛皮羽毛ゴーレムで何故私だけが素肌なんだ!?」
ウルールは目の前で展開されている状況に、深く困惑していた。無邪気なデールはきゃあきゃあ笑っているが、ウルールは笑えない。
(何なんだろう、この人たち)
人間の方の騎士は、ぎゃいぎゃい文句を言いながら回っている。くるくる回りつつ道を進んでいるのだ。何故かと言えば、彼がどデカい蚊柱の渦の中心になっているからである。立ち止まれば一瞬の内に血を吸い尽くされるのではないか、という恐怖を傍から見ているウルールですら感じてしまう。
その蚊柱を懸命に追い散らそうと奮戦しているのが鳥人の騎士。鼻の頭が真っ赤になるくらい力一杯、片方だけの翼を羽ばたかせて風を送っている。つまり後ろ向きに歩いている。冷静に俯瞰して見ると底抜けに間抜けな構図なのだが、しかしそのお陰で辛うじて、彼の主人は無事なのだ。そしてランタンの光と体温を目掛けて蚊が一目散に人間の騎士に集っているため、ウルールたちはたまに寄ってくるのを追い払えば、何の被害もない。
(有難いけど、でもその、騎士ってもっとパリッとして格好良い感じなんじゃなかったけ。これでハージェスに勝てるのな? 本当に? でも、ダヴァランさんが信用してるんだから、大丈夫なのかも……)
「ウワーッ! やっぱり口に入った! 風力が足りないぞツェス!」
「うるさい! お前がもっと速く回れ阿呆!」
(……駄目かも)
ウルールは努めて深く考えないようにし、足を前に動かすことだけに集中した。
ということで、ブラーク様に対象になっていただきました。判定は【器用ロール】(目標値4)のところ、出目「6」。リプレイ内容的にはツェスさんの器用ロールだった気もしますが。そんなこんなで賑やかに進む一行ですが、次は中間イベントです。うるさ過ぎて死霊秘術師ハージェス様がブチ切れなさっているかもしれませんが、さて何が待ち受けている事やら!