
このリプレイは、天狗ろむ様のシナリオ
『ヴォンダンス~踊らぬ犬は冬に鳴く~』
を遊んだ記録を小説仕立てにしたものです。
今回は2回目の冒険のプロローグ。
冒険の始まりはもちろん〈天駆ける狗〉亭から。
さあ、我らが聖騎士殿が階段を下る足音が
聞こえてきたようでございます。
◇
シナリオ参照元:
『ヴォンダンス~踊らぬ犬は冬に鳴く~』
[プロローグ]
ふあ、と欠伸をしながらブラーク・オ・リエンスが階段を下りてきた。端正な顔が台無しである。
「坊ちゃん、相変わらずいいご身分だな」
「快適な寝床だったからね。おはよう、ダヴァラン殿」
残った欠伸をきゅっと噛み締める顔は人間種族の五十歳とは到底信じられず、ダヴァランは彼がまだ十代の青臭い青年のままであるような気が、どうしても拭えない。
「まったく! 太陽はとっくに昇っているぞ」
「あんまり早く食堂に顔を出すと質問攻めに会う、と忠告したのはダヴァラン殿だろうに」
「まあそうだが、それにしても限度はある」
食堂にはブラーク以外に客はいない。勝手知ったる我が家という様子でカウンターに腰を下ろしたブラークは、おたまで大鍋を掻き回すダヴァランを興味深そうに眺めた。
「すっかり板に付いたものだね」
「お前がすっかりお貴族様になったようにな」
くすくすと年齢不詳の聖騎士は笑い、ダヴァランは朝食の一品目、根菜と豆の温かなスープを、幾千の手と幾万の料理が往来して磨かれた光沢艶やかなアイアンウッド製の天板の上に置いた。
粉チーズをかけたスクランブルドエッグ、カリカリに焼いたベーコンを乗せたグリーンサラダ、香辛料を効かせたチャマイ風ピリ辛マトンソーセージ、蜂蜜をかけた黒パンに、搾りたてのミルク。次々にダヴァランが並べる料理を、ブラークは幸せそうに微笑みながら、丁寧かつ上品かつ断固たる勢いで胃袋に詰め込んで行った。食べさせ甲斐のある男であることは認めざるを得ない。鼻の頭に蜂蜜をつけているのにも気付かぬ様子で朝食と組み合っているブラークは、お貴族様という枠からは完全にはみ出した、やんちゃ坊主に毛が生えた程度の生き物に見えた。むしろ幼くなったとすら思えるような……。
ダヴァランの脳裏に、
(つまりね、完璧さを求めるレディもいれば、不完全性を欲するレディもいるという事だよ。分かるかなダヴァラン殿?)
という、数十年前に聞いた台詞が再生された。
「ははあ……」
「んー?」
「鼻の頭に蜂蜜付いてるぞ、坊ちゃん」
「おや、それは失礼」
親指で蜂蜜を掬い取り、ぱくりと口にくわえたブラークの姿を見て、ダヴァランは思わず念を押した。
「絶対に、ディジベラには手を出すんじゃない。約束しろ」
ブラークは口に指を入れたまま笑い始める。
「私のことを何だと思ってるんだ!?」
「さかりのついた貴族のお坊ちゃんは、何を仕出かすか分からないと相場が決まっている」
「出さないよ。出さないとも。私にも見境という単語は存在するんだからね。それより私は、ダヴァラン殿との空白期間を埋めたいんだ。顔を合わせたのは二十年ぶり、いや、もっとか?」
「そうだな。ここの村に落ち着いて手紙を出したのが……いつだったかな、ちょっと待て」
そうやって積もる話をしている内に朝食はみるみる片付き、食後の茶を出した辺りで、ディジベラがウルールと、ブラークの忠実なる腹心ツェスを連れて帰ってきた。
「ただいま、ブラーク様にパパ」
「「おかえり」」
同じタイミングで発声してしまったことにダヴァランは唖然とし、ブラークはカウンターに突っ伏して笑う。
「仲良しねえ」
ディジベラが喜色満面で言うと、
「仲良しじゃない」
「仲良しだよ」
また二人は同時に答えるのだった。
反射的にダヴァランがブラークの襟首を引っ掴むと、ツェスの猛禽らしい鋭く目が細められ、冷ややかな警告の眼差しがダヴァランに注がれる。ダヴァランはさり気なく(ブラークに弱気と思われるのは癪なのだ)突き放すように手を離した。
「ディジー、異常はなかったかい」
「大丈夫。ハージェスが追いかけて来た気配は無いって、ウルーソ牧師も確かめてくれたわ」
「なら良かった」
「じゃあパパ、私はシェルくんを呼びに行ってくるから!」
「待ちな……」
風のように飛び出して行った愛娘を止め損ねて、ダヴァランは言葉の続きを溜息に代える。
「元気なレディだ。しかし良いのかな?」
「まあチャマイへ行くだけなら、危険もないだろう」
番犬の元気に吠える声が、ゆっくり遠ざかって行く。ディジベラの番も立派に務めてくれるはずだ。
「ああ、父親というのは難しいね。……さて、私たちも行かなくては。ツェス、鎧の着付けを手伝ってくれ」
軽やかに椅子から下りたブラークに、影のように鳥人が付き従う。
「気をつけろよ」
ダヴァランの言葉に、ブラークはひらひらと軽やかに手を振ってみせた。次なる目的地はオードリー・ヴォンの墓所である。そこに『魂鎮めの儀式』のもうひとつの要、奏楽ゴーレムが眠っているという。墓所と言ってもハージェスのそれよりは剣呑な響きではないが、かの大亡霊が座して見守る訳もあるまい。
(信じるしかないが……。いや、考えすぎか)
ダヴァランはおずおずと食堂の隅に座ったウルールにミルクを出してやることにし、懸念を頭から締め出した。
◆冒険の準備◆
〇『天駆ける狗のディナーは■ミの鍋』収録のサプリを使用し、〈天駆ける狗亭の朝食〉をいただきます。ひとりあたり金貨5枚。【幸運ロール】(目標値2)に挑戦して成功、マスター様作の美味しい朝食をいただきました。体力・副能力値の最大値上昇と、任意のタイミングで【判定ロール】に+1できる素敵な効果が得られます。判定に失敗するとどうなるか。ディジベラちゃん様の、その、あの、あれです、詳しくは後述のサプリをお確かめください!
〇ブラーク様の故郷=ロング・ナリクで都市サプリを使用し、〈青の聖鎧〉チャレンジ! 一刻も早く欲しい。希少な装備品の為、購入には【幸運ロール】(目標値6)の成功が必要となりますが……またも出目2で失敗……。そんな……。
〇前回の冒険で「大ぶりな水晶(金貨50枚相当)」「蜘蛛の糸」「パラソル・ドール」を獲得しています。水晶は売却して山分け。ドールはブラーク様が、蜘蛛の糸はツェスさんが持つことにします。
サプリメント参照先:『天駆ける狗のディナーは■ミの鍋』
◆主人公のステータス紹介◆
①[ブラーク・オ・リエンス]
レベル19/聖騎士
・技量点:2
・生命点:11+2(朝食)
・筋力点:5+1 (朝食)
・従者点:8
(保留経験点1)
・特技:【高潔な魂】【全力攻撃】【神の加護】【脳天かちわり】【戦場の風】【威風】
・従者:メイア(今回は宿でお留守番)
・故郷:ロング・ナリク
・持ち物=騎士の両手剣、エンベニーの片手剣、板金鎧、金貨178枚、銀珠、パラソル・ドール
②[ツェス・フォレストウィン]
聖騎士/レベル14
技量点:1
生命点:8+2(朝食)
筋力点:6+1(朝食)
従者点:9
(保留経験点1)
・特技:【高潔な魂】【全力防御】【神の加護】
・持ち物=聖騎士の槍(両手武器/斬撃)、板金鎧、金貨30枚、銀照弾、銀製のダガー、火熾しセット、蜘蛛の糸