一日一歩のローグライクハーフ2/⑭逃げるは恥だが

強敵トロルガを退けた一行。ふたりとも生命点にダメージは入りましたが、まだまだ元気。頼もしいですね。プレイヤーがフラグを立て過ぎですって? ……まあまあまあまあ、先に進みましょう!
[2部屋目]33:作業場

[察知]

ダイスロールの結果、この作業場にはLv.4のオークが9人も働いていると分かりました。こちらが黒エルフのスネージに雇われている以上、オークたちは敵です。いくらリヴさんが強いとはいえ多勢に無勢というもの。

そこで奥の手を使います。【察知】です!

【察知】とは器用点を持った主人公が使用できる能力です。目標値4の判定に成功すると、次の部屋に入らずに済ませることが出来ます。 当パーティではソールくんが器用点を持っています。

ダイスロールで4が出ましたので、作業場をスルー出来ます!

一安心。ということで……

……部屋には北と西に扉があった。

この混沌迷宮には調査の手がすみずみまで入り、地図が作られている。リヴの頭の中にも地図がある。北の扉から繋がる部屋は行き止まりだ。行くべきは西。西側の扉は煤まみれで、大穴が空いていた。

「リヴ殿。まさかトロルガは」

「逃げた」

「あれでもまだ生きていたというのか!? 止めを刺さねば。手負いのままではあまりに危険だ。後続の冒険者もいるだろう」

リヴは鼻を鳴らし、ソールが言いつのる言葉を短く断ち切った。

「契約外」

「しかしだな」

「お前との契約は終わっている。トロルガの首は求められていない」

ソールは肩を落とした。

扉の外、真っ直ぐに伸びる薄暗い通路には黒い足跡が残っている。

通路の左右には部屋。

左はやたらに騒がしい。覗こうとしたソールをリヴは制した。

「ゴダイバの三下だ」

リヴはゴダイバにも良く顔を知られている。今は敵だということも既知だろう。そのまま素通りさせてくれるとは思えない。

一計を案じる必要があった。

計略を練るのは弱か?

いいや、最適手を選ぶ知恵こそ強さではないか。

リヴは火吹き獣の尻をぴしりと叩いた。驚いた獣がソールを引きずって走り出す。

「うおおおお、ひーどのーーー! やめてくれ、靴に穴が開いてしまう、手加減を、いや手ではないな、手ではないがうわあああ」

リヴは追いかける……ふりをしてソールの後を追った。

すり抜けざまに見遣ると、作業場のオークたちはツルハシを手に一様にポカンとしてリヴを見送った。追って来るものはいない。怒鳴り声すら上がらない。珍行動に毒気を抜かれたのだろう。

このように、一行は危機を脱したのである。