強敵トロルガを退けた一行。ふたりとも生命点にダメージは入りましたが、まだまだ元気。頼もしいですね。プレイヤーがフラグを立て過ぎですって? ……まあまあまあまあ、先に進みましょう!
[2部屋目]33:作業場
[察知]
ダイスロールの結果、この作業場にはLv.4のオークが9人も働いていると分かりました。こちらが黒エルフのスネージに雇われている以上、オークたちは敵です。いくらリヴさんが強いとはいえ多勢に無勢というもの。
そこで奥の手を使います。【察知】です!
【察知】とは器用点を持った主人公が使用できる能力です。目標値4の判定に成功すると、次の部屋に入らずに済ませることが出来ます。 当パーティではソールくんが器用点を持っています。
ダイスロールで4が出ましたので、作業場をスルー出来ます!
一安心。ということで……
……部屋には北と西に扉があった。
この混沌迷宮には調査の手がすみずみまで入り、地図が作られている。リヴの頭の中にも地図がある。北の扉から繋がる部屋は行き止まりだ。行くべきは西。西側の扉は煤まみれで、大穴が空いていた。
「リヴ殿。まさかトロルガは」
「逃げた」
「あれでもまだ生きていたというのか!? 止めを刺さねば。手負いのままではあまりに危険だ。後続の冒険者もいるだろう」
リヴは鼻を鳴らし、ソールが言いつのる言葉を短く断ち切った。
「契約外」
「しかしだな」
「お前との契約は終わっている。トロルガの首は求められていない」
ソールは肩を落とした。
扉の外、真っ直ぐに伸びる薄暗い通路には黒い足跡が残っている。
通路の左右には部屋。
左はやたらに騒がしい。覗こうとしたソールをリヴは制した。
「ゴダイバの三下だ」
リヴはゴダイバにも良く顔を知られている。今は敵だということも既知だろう。そのまま素通りさせてくれるとは思えない。
一計を案じる必要があった。
計略を練るのは弱か?
いいや、最適手を選ぶ知恵こそ強さではないか。
リヴは火吹き獣の尻をぴしりと叩いた。驚いた獣がソールを引きずって走り出す。
「うおおおお、ひーどのーーー! やめてくれ、靴に穴が開いてしまう、手加減を、いや手ではないな、手ではないがうわあああ」
リヴは追いかける……ふりをしてソールの後を追った。
すり抜けざまに見遣ると、作業場のオークたちはツルハシを手に一様にポカンとしてリヴを見送った。追って来るものはいない。怒鳴り声すら上がらない。珍行動に毒気を抜かれたのだろう。
このように、一行は危機を脱したのである。