一日一歩のローグライクハーフ2/㉒迷宮でお茶を

縞蛇一行を先に行かせ、彼らの気配が無くなってから先に進もうとするリヴとソール。しかし不穏な物音が聞こえてきます。

通路を進む。

左手の部屋からは戦闘の音が響いていた。縞蛇一行がこの層を縄張りにする大物と遭遇したのだろう。だがカオスマスターではないはずだ。

第3層をくまなく調査したゴダイバの長が言うには、カオスマスターは「いない」のだそうだ。迷宮に住んでいるオークたちがくまなく探しても見つからないのであれば、確かに「いない」のだろう。

しかし異様な気配は確かに「いる」とも言うのだった。

怒り狂ったスネージの長に命じられて、リヴがオークの長を探しに混沌迷宮の第2層に潜ったあの日、第3層に赴いたオーク達が揃って失踪する事件が発生していたのだそうだ。

長は黒エルフとの約束を反故にしても行方不明者の捜索に重きを置くつもりだった。だが第3層の様子がおかしく、断念せざるを得なかった。

「尋常じゃねえ混沌の気だった。歩くだけで気が触れるようなだ。首領がいる。うちの若いもんはそいつの呑まれたのよ。だがそいつの姿は見えねえ。消えたやつらの痕跡もねえんだわ。どっこを探しても」

ゴダイバ・オークの長は太い腕を組み、憤慨を鼻息にして宙に放った。

[3部屋目]24: 黒エルフの戦士

一行は通路の向かって右手の分かれ道へ。通路に水が染み出しているのに気を引かれたのだ。

ツルハシを拾った部屋の状況からすると、オークたちは水場の先にカオスマスターの気配を感じ取っていたのかもしれない。

しかし外れだった。道の先の部屋にいたのはスネージの長の息子と、数人の戦士。優雅に茶を淹れている。

湿気った地下迷宮の空気が追い払われ、リヴには何の草木なのか花なのか分からないが、清涼な香りが漂っていた。

癪に障る。

黒エルフはこちらの黒いスカーフを認めると、丁寧に頭を下げる。

「ここにカオスマスターはいません。……と言う係をしています」 知らず、リヴは渋い顔をしていたのだろう。スネージの長の息子は苦笑し、

「戦士としては失格でしょうが、僕には、混沌が鎮まり一族が安寧に暮らせる事が最も大切なので」

そう告げた。

※回復ポイントだが、負傷者がいない&副能力値が減っていないので何も起こらない。

[4部屋目]52:殺人バチ

リヴは名案を閃いた。

ここに青二歳を置いて行けば良いのではないか?

縞蛇にはああ言ったが、方便であることはソールも理解しているはずだ。

なお良いことに黒エルフは二杯目の茶を淹れている。育ちの良いソールが断るとも思われない。絶好機。

リヴは立ち上がった。

「次の部屋を偵察してくる。お前はそこにいろ」

そのまま次の部屋から先へ進んでしまうつもりである。気づいたソールが追う気を無くすほど先へ。

しかし、である。

その目論見は扉を開けてすぐに潰えてしまったのだった。 ぶうん、と羽唸りが聞こえ、リヴは即座に扉を閉める。殺人バチの羽音だった。

人の顔ほどの大きさに育つ殺人バチの群れを突っ切って走り去ろうというのは、自殺行為と等しい。

それらの息を止める不思議な香木を迷宮内で手に入れていたが、悪いことにそれはソールの荷物袋に入っていた。

歯噛みするリヴと、スネージの息子の目線が交錯する。黒エルフは微笑んでいた。そうなると分かっていましたよ、と言わんばかりに。

やはりあの父の子だ性格が悪い、とリヴは感心した。

仕方なく戻り、ソールの荷物から香木を取り出すと火がつきやすいように削って毛羽立たせ、湯を沸かしていた炎を借りると、煙を上げるそれを次の部屋の中に放り投げて来る。後は惑乱したハチが扉に体当たりする音が止むまで、しばし待つばかりだ。

書いているうちにスネージの長の息子さんが気に入ってしまったので、ミッドジャーニーに「浅黒い肌をした森に住むエルフの若者」のピンナップを作成してもらいました。全体的に目力が強くて迫力ある佇まい。こんな方に訳知り顔で微笑まれたら、リヴ様でもない限りちょっと怖くなってしまうかも。

なお、黒エルフの肌色を「浅黒い」と解釈させていただいたのは、ローグライクハーフwikiの砂漠エルフについての記述に"砂漠に生息するエルフは色黒で、しばし黒エルフと同一視される"とあったためです。 あくまでイメージということで、何卒よろしくお願いします。

wikiの「エルフ」の項はこちらから。