一日一歩のローグライクハーフ2/㉓樽割りのホッコ

迷宮南部の「水浸しの部屋」に手がかりはありませんでした。一行は針路を切替え北へ。そこで出会ったのは……。

[先へ、先へ]

(ここからしばし、早送りで迷宮の様子をお送りいたします)

殺人バチの気配が途絶えたので、黒エルフのお茶会を辞して、腰を上げる。

ハチコロリを投げ込んだ部屋はまだ煙たく、刺激臭が漂っている。ソールがくしゃみをし、そのついでに目に入った巨大なハチを見て悲鳴を上げた。

正体不明の煙と戦ったハチたちの尻から突き出した針は槍の穂先のようで、毒があろうがなかろうが、一刺しされれば致命傷になろうことは疑う余地も無い。

部屋の一角には殺人バチの築いた巨大な巣があり、リヴとソールはそれを慎重に潰すと蜜を失敬して(※ダイスロールの結果、2個獲得。リヴとソールでひとつずつ持つ)、北の通路へ抜けて行く。

[通路]1:隠された宝物

通路では火吹き獣ひーちゃんが良い鼻で星型の小宝石(金貨15枚相当)が落ちているのを見つけてくれました。

[5部屋目]46:ペンデュラム

続く部屋には天井から飛び出す罠が仕掛けられていたが、リヴの優れた運動能力は難なく対応した。

(対象人数1、難易度5→リヴが技量点で挑戦:出目4+2で成功)

[通路]2:何も起こらない

さらに北へ進む。

通路は静かで、カオスマスターを仕留めるために天幕の前に集まった冒険者の数を考えれば、不気味ですらあった。

縞蛇一行の戦闘音が聞こえてきた大部屋にも繋がっているのだが、そちらからの音も止んでいた。 リヴは、その大部屋を覗く事にする。

[6部屋目]62:オークの猛者

(※Lv.5、反応表1→ワイロ)

部屋の中では縞蛇一行の駆け出し兵士が何人か、見るからに手練のオークの足元に倒れている。ソールが矢を番えて引き絞ろうとするのを、リヴは止めさせた。

オークはつまらなさそうに肩を竦めて、襟首を掴んでいた兵士を床に放り投げた。まだ息はあるようだ。

ひよっこ絞めても、なーんも楽しくねえわ」

とオーク。訛りはあるが、善の共通語だ。

ゴダイバの中でも頭脳派と評判だが、リヴにしてみればお喋り過ぎるのが難点だと思う。

「蛇野郎なら細切れにして壺に漬けたるが」

「同感だ」

オークは首を傾げた。

「リヴよ、まだその犬っころ連れ回しとるのか」

「勝手についてくる」

「うむ。勝手に同伴させていただいている」

リヴはじろりとねめつけたが、ソールは弓を背負い直すところで横を向いており、せっかくの睨みも無駄になってしまった。

「我が名はソール。貴方のご芳名を存じ上げず申し訳ないのだが――」

「おいリヴ、こいつは何を言うとるだ」

「お前の名前を知らないと」

オークは牙の突き出した唇の端を、むず痒そうに搔いた。

「はあ。そんな言葉は初めて聞いただに、ちっと魂消てまうな。おらぁは<樽割りのホッコ>だ」

「ホッコ殿、お頼み申します。この兵士の方々を、どうか迷宮の外へ連れ出してくださいませんか」

ソールは嘆願した。オークの猛者は値踏みするように青二歳の顔をじろじろと眺める。

「おめさんのためにタダ働きせいと」

「あ、いや、その、ご無礼を」

懐から先程拾ったばかりの宝石と金貨とを出して、ホッコに見せた。

「まぁええ」

宝石の匂いを嗅いでからを受け取ったホッコは、

「まんず、姐さんから離れんようにせ」

ソールの鼻を指さして、念を押す。そしてその逞しい肩に兵士を何人も重ねて乗せて、のっしのっしと歩き去っていった。

前回の『黄昏の騎士』にてワイロを要求されたソールくんが珍しくブチ切れた事案があったので、それを回避するために、ソールくんから何かをお願いする流れにしてみました。ちなみに、ホッコさんの訛りは色々な訛りをミックスした、なんちゃってオーク訛りですので「何で色んな○○弁を混ぜてるんだよ~!」という疑問はそっと右から左に流して置いていただけますと幸いです。色んな地域の善種族の冒険者と話してるから混ざるんですよ、たぶん!!!