一日一歩のローグライクハーフ2/⑲歴史的な会談

黒エルフのスネージ一族と、土着のオーク・ゴダイバ族。犬猿の仲の両者ですが、カオスマスターという大敵を前に一時休戦することに。

[会談]

森が草原に変わり、やがて乾いて荒地になっていく境目に、鳥人マトーシュの像が立っている。混沌迷宮に祝福を与えるその像は、今や欠け崩れて顧みる者は誰もいなかった。

だが今日だけは像の眼前は賑わっている。大きな天幕の下に黒エルフとオークと冒険者たちが詰めかけているからだった。

両種族にとり歴史的な出来事が起こっている。

一時とはいえ和睦と共闘とをしようというのだ。

リヴは天幕の上座に席を作られ、置物のように鎮座して益体もない演説と儀式を見るのにうんざりしている。しかし見届け役なので動く訳にも行かない。舌打ちも我慢しておく。忍耐の修行と思うより他にない。

そもそも「歴史的な」というのは黒エルフのスネージ一族による見解であり、元から混沌迷宮を縄張りしていたのに喧嘩を吹っ掛けられたオークのゴダイバ一族にとっては、和睦も何もない。

手前勝手に始めた喧嘩を手前勝手に中止するだけのことを、こんなに偉そうに、さもエルフに大儀があるかのように仕切られても困る、というのがオーク側の本音であろう。

そのように、居並ぶゴダイバたちの顔に書いてあった。

しかし黒エルフのスネージ側にとっては自分たちの新しい故郷を築けるかどうかの分水嶺なのであろうし、そのためにはどれだけ芝居臭くても演じ切るより道はない。退路を断っての大勝負のつもりであろう。

どれだけオークの体臭がきつくても、美学に反するオーク式の荒々しい儀式に参加させられても誰一人中座しようとしないのは、天を衝くほどのプライドをそそり立たせたエルフにとって涙ぐましい努力と結束の賜物であることは間違いない。

リヴにとっては心底どうでも良い事であった。

好きにすればいいのだ。

そして一方、ソールといえば、こちらは無闇に生き生きと通訳の任を果たしていた。

【善】の共通語を【悪】の共通語へ、お次はその逆へ。

冒険者なんて辞めてしまえとリヴは思った。

最後に両種族の長が、迷宮内からリヴが持ち帰った謎の水晶駒を砕いて二心が無いことを宣言すると、ようやくお開きになる。

冒険者たちが待ち望む時間の始まりだ。

迷宮への立入許可、中の財宝は誰にも断りなく持ち帰る事が出来るという報酬、それから。

「カオスマスターの討伐を果たした者には、両種族より謝礼が支払われる」

スネージとゴダイバの代弁者のような顔をして告げたソールの言葉に、冒険者たちはどっと沸いた。

我先にと駆け出すパーティー、相棒を探して声を上げる者、不倶戴天のライバルと出会ったのか殴り合いも始まる。リヴの見ている前で、スネージの長とゴダイバの長が同時に溜息をついた。

……というわけで、3回目の迷宮探索が始まります。今回は「固定マップモード」で進めて行きます。早速、何が起こるのか見て行きましょう!