大食らい虫の体内から無事帰還したリヴとソール。何だかべとべとになってそうで、絵面が可哀想ですが……。ともあれ冒険再開です。
【最終イベント】監禁部屋
暴れ回った大食らい虫の開けた壁の穴の向こうから、
「助けてくれ!」
という叫びが聞こえた。
「まさか……?」
「スネージだ」
穴は別の部屋に繋がっていたのだ。
駆け出すふたりと一頭。ともかくスネージの長は生きている。助け出さなくては!
穴を潜って見たものは、壮年の黒エルフが階段を背に、不自然な姿勢で立ちつくす姿。足が動かせないようだ。スネージの長で間違いない。
そして冒険者たちとスネージの長の間には、ひとりの兵士の背中。
状況からして長はこの戦士から逃げていたが、何らかの力によって階段の前で動きを封じられてしまったのではないだろうか。
「兵士殿、私たちはその方に用がある。何か敵対する理由があるのか」
ソールの問いかけに、兵士はバリバリと音を立てて首を真後ろへ回し、虚ろな目で闖入者を眺めた。にたりと笑った唇は乾いて干からびたミミズのよう、虚ろな眼球は真っ白に濁っている。兵士はミイラであった。
リヴの横でソールが悲鳴か吐き気を押し殺している気配が伝わってきた。忍耐は強さである。良い事だ。
有り得ない角度で曲がった不死者の腕が剣を引き抜く。
「そのスカーフ……! 私は黒エルフのスネージ一族を率いる者だ! 礼はする、助けてくれ!」
「言われなくとも仕事だ」
リヴは戦鎚を構えた。
いざ、戦闘開始──なのですが、0ラウンドと1ラウンドの攻撃で「ミイラの戦士長」の生命点5を削り切ってしまいました。相手に反撃すらさせずに圧勝。息が合ってきたんですね! プレイヤーとして嬉しい限り。
ミイラが火吹き獣の炎に巻かれて燃え尽きると同時に、黒エルフが膝から崩れた。ソールが慌てて駆け寄り、手を添えようとしたが、その手は強く払われてしまう。
人間の情けなど不要という意思表示。堕ちれども見事に高いエルフの矜恃ではある。しかし虚勢は弱とリヴは断ずる。
「お前は……リヴァーティア・イランドか。助かったが、何故ここにいる」 リヴは顎をしゃくってソールを示した。
「雇われた」
「お初にお目にかかります。私はソール・オ・リエンスと申します、長殿。この度は……」
「話は後だ」
とめどなく話し出しそうなソールを制する。
「スネージの里でやれ」